今日は年末年始休暇の2日目、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。
さて、私が日本病院経営支援機構を起業する前、
現役の事務局長として最後に病院の経営改革・再建活動に従事した
岡山市立総合医療センター(岡山市立市民病院)が、
令和6年4月に独立行政法人創立10周年を迎え、
「法人設立10周年記念誌」(平成26年4月~令和6年3月の10年間)を
刊行することになりました。
私にも「当時の思い出話を」との依頼があり、以下の文章を寄稿したところ、そ
れが掲載された「法人設立10周年記念誌」が送られてきましたので、
ご参考までにその文章を披露致します。
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(岡山市立総合医療センターの法人設立10周年記念誌寄稿文)
乱世の事務局長
病院の経営改革・改善活動に終始した私の3年半の任期
法人設立10周年、おめでとうございます。
私が岡山市立総合医療センターに事務局長としてお世話になったのは、
平成28年4月~令和元年9月の3年半でしたが、
「当時の思い出話を」との今回のご要請にお応えして、
その疾風怒涛のごとく過ぎた3年半を、許された字数の範囲内で
以下に述べてみます。
1.乱世の事務局長
事務局長として赴任した際、理事長の松本先生から、
「事務局長候補は他にもいたが、その中で君に来てもらったのは、
岡山市立総合医療センターが、それまでの親方日の丸の自治体病院から、
病院がその経営・運営に責任を持たなくてはならない独法化病院に移行して、
大きな損益赤字の解消やプロパー事務職員の戦力化等で
早急に結果を出さなくてはならない「乱世」の時代に
突入したことが大きい」
と言われました。
2.経営改革・改善の推進
当時の岡山市立総合医療センター、
なかでも岡山市立市民病院の喫緊な課題は、
経営・運営体制整備と損益改善でしたので、任期中私は、
理事長先生以下多くの病院職員の方にも参加を求めて、
「病院の経営・運営状況の見える化」「病院の意思決定の仕組み整備」
「経営改革PT立上げとWT設置による各種経営課題の解決」
「病床稼働率向上対策会議とベッドコントロール強化と集患営業のアウト
ソーシングによる病床稼働率向上」「薬剤・材料購買費削減等の購買改革」
「1人事務長制度」等の経営改革・改善のための施策を展開し、
その結果、赴任当時の7.8億円の赤字は3年半後ほぼゼロまで縮小しました。
3.病院経営の方法論と今の私の仕事
岡山市立総合医療センターの3年半の任期中に私は、
考えられる限り全ての経営改善対策を実施しましたが、
そこから「病院経営は『こうすれば必ずうまくいく』という
『病院経営の方法論』を導き出したことが、
今の私の仕事に繋がっています。
今、私は
(1)事務長・院長・看護部長等の病院経営幹部の教育育成を行う
「病院経営者育成塾」を主催する一方で、
(2)全国の病院を対象にその経営改革・改善の支援をする
「経営コンサルタント活動」を行っていますが、そこでやっていることの大半は、
岡山市立総合医療センター時代に会得したことがベースになっています。
岡山市立総合医療センター時代から4年以上が経過し、
その時、見聞き経験したことは徐々に記憶から薄れつつありますが、
それでもその時病院でやったこと、そこでともに経営改革・改善に
取り組んだ方々との3年半の思い出は、私にとって最大・最高の財産であり、
今後ともずっと忘れることはないと思います。
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岡山市立総合医療センターから届いた「法人設立10周年記念誌」は、
体裁が綺麗でまとっていて、フルカラーでページ数が140ページもあり、
内容も豊富です。
当初は「予算100万円で、白黒で30ページの記念誌にし、
寄稿者と病院職員1000人に配布する」予定だったそうですが、
編纂をやっているうちに要望が増えていき、結局、
(1)10年分の新聞記事を載せる
(2)岡山市立総合医療センターでロケ撮影を行った映画
「8年越しの花嫁」(佐藤健・土屋太鳳W主演)の
特集を組むなど盛りだくさんの内容にする
(3)ページ数も140ページに増やす
(4)白黒からフルカラーに変える
(5)表紙や紙面の資質を上質なものに変更する
(6)配布先も2000人に増やす
ことになったといいます。
しかし、かかった費用は当初の100万円から200万円に
増えただけです。
普通、これだけの内容の記念誌を刊行して2000冊を配布すれば、
もっと費用がかかりますが、それが岡山市立総合医療センターでは
200万円で済んだ理由としては、
(1) 事前に記念誌を発刊して高くついた他の病院に
ヒヤリングして、費用高騰は、構成決め、原稿依頼、
原稿校正依頼、写真撮影段取り、インタビュー調整、
各種データの準備、提供等の全てを業者任せにしたことが
原因だったことが判明したので、センターでは、それらを
極力内製化して価格を抑えたこと
(2) それに加えて業者と交渉して値引対応をしてもらったこと
によります。
今回「記念誌を」と言い出されたのは理事長先生とのことですが、
記念誌には「岡山市立市民病院の建て替えに15年の歳月を要し、
その間に二度の廃院の危機を乗り越えて、
新病院がやっと実現した経緯」が
理事長先生自らの筆で描かれていて、それを読むと、
理事長先生が「今記念誌を残しておかなければ、
病院の歴史を知っている人も資料も分からなくなる」と
考えられたであろうことが良く分かります。
その理事長先生は「これだけのものが200万円で完成したこと」
にご満悦とのことで、「せっかく良いものができたのだから」と、
連携医療機関はもとより、岡山大学病院の全教授、
県内の自治体病院、県内の病院に送付先を拡大し、
増患目的でも使用することにしたそうですが、
今回の記念誌の出来を見ればそれも当然のことかと思います。
理事長先生の思い入れとリーダーシップ、それを支える職員の
「良いものを安く」提供しようという英知と努力が生んだ
今回の「記念誌」ですが、病院や企業全体の経営にも
共通するところが多々あると思い、紹介させていただきました。
それではまた。